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1000年の美意識を観に行ったら、1000年前の人間の心に出会った

こんにちは!Rolo.アクセサリーのakiです。

京都国立博物館で開催している『源氏物語展』に行ってきました。

源氏物語は、1000年以上も日本人に愛され続けてきた物語。


引用:https://www.metmuseum.org/『源氏物語図屏風』

「その美しい世界観を知りたい!」

と思っていきましたが、見終わった私の中に強く残ったのは美術の美しさだけではなく

1000年前に苦しんでいた人間の心。

そして、それを描く紫式部の深い洞察力。

『源氏物語』は、どんな話?


引用:https://www.metmuseum.org/『源氏物語画帖』

『源氏物語』は、平安時代の女性作家・紫式部によって、11世紀初め頃に書かれたとされる全54帖の長編物語です。

主人公は、天皇の皇子として生まれた貴公子、光源氏。

華やかな宮廷社会を舞台に、彼の恋愛・出世・栄華・衰退・次の世代の人々の人生までが描かれています。

私がもともと知っていたのは、光源氏が美男子で、いろんな女性と恋愛、不倫、不義を重ねるというとんでもない主人公の記憶だけ…(苦笑)

日本の宮廷物語といえば『大奥』のように女性たちの愛憎劇も思い浮かびます。

最近のアニメ『薬屋のひとりごと』って知ってますか?
あの話でも、華やかな宮廷の裏で「嫉妬や思惑」が交錯していて人気がありますね。

だから(?)、優雅な宮廷社会というのは人間関係がドロドロしやすいシチュエーションなのかも?って思うようになりました。

ただ、今回初めて知ったこともたくさんあります。

例えば、光源氏が父である天皇の后・藤壺(光源氏からすると義理の母にあたる)と密通し、秘密の子どもをもうけていたこと。

(そんなことある⁉︎と思いましたが、亡き母に似ていて惹かれたとか…)

さらに、光源氏の正妻・葵の上が、彼の愛人の六条御息所の生霊に苦しめられ、呪われ亡くなること。

そして晩年、光源氏は逆に、妻の不義に直面し、昔の自分の罪を思い出す。

華やかな恋愛を重ねてきた主人公が、後になって自分の行いの重さを思い知る。

これは、恋愛を使った因果応報の物語。

六条御息所の、憎しみと孤独


引用:https://commons.wikimedia.org/『源氏物語绘卷』

私が今回の展示でとくに印象に残った人物といえば、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)です。

彼女は、かつて皇太子の妃だった高貴な女性。

しかし夫に先立たれた後、年下の光源氏と恋愛関係になります。が、次第に彼の足は遠のいていく。

さらに、光源氏の正妻である葵の上の一行と牛車をめぐって争いになり、人前で屈辱を味わう。

その恨みや嫉妬は、やがて自分でも制御できないものとなり、生霊となって葵の上を呪い殺すという話です。

恐ろしい。

でも私がすごいと思ったのは、彼女が単なる嫉妬深い悪女とは描かれていないこと。

高貴な身分で、美人で、教養も誇りもある女性。

そんな彼女が、年下の恋人に軽んじられ、それでも彼を忘れることができない。

自尊心を傷つけられ、怒りや嫉妬を抱きながら、そんな感情に支配される自分自身のことをも恥じている。

そこまで、人の心理を掘り下げている。

悪役が、なぜ闇堕ちしたのかを描いたストーリーに同情したことありませんか?

私はそんな気持ちになりました。

もし自分の存在意義や誇りを深く傷つけられたら

どんなに理性的で穏やかな人でも、いつもどおりの自分ではいられなくなるかもしれない。

光源氏が後年に自分の行いに苦しむことで、この人の悲しみが少しでも報われる?

そう感じてしまう自分もいるけど、誰かの不幸で報われたと思うことへの嫌悪感もある。

そんな人間の矛盾が、文学の面白さかもしれません。

そして、そこを読む人自身にも問いかける。

人間の心の機微を理解し、答えの出ない感情を描く。

時代を問わず文豪と呼ばれる人たちは、ここのところが妙だと感じます。

女性はどんな気持ちだったのか?


引用:https://www.metmuseum.org/『土佐光則筆 源氏物語画帖』

展示を見ていて、もう一つ気になったことがあります。

それは絵の中に描かれた、男女の姿。

女性たちの様子を遠くからのぞき見る男性。

反対に、男性たちの姿をそっと見る女性。

そうした場面が多くて、妙に目につきました。

平安時代の貴族社会では、現代のように男女が気軽に、自由に交流することは難しかったようです。

身分の高い女性は御簾や几帳などで姿を隠すことも多く、和歌や手紙で思いを伝える文化がありました。

  • 会いたい。
  • もっと近づきたい。
  • 相手が何を考えているのか知りたい。

そんな気持ちは、源氏物語をみている限り、今も昔も変わらないはず。

でも、その感情を今のようにオープンに表現できない社会では、恋愛はもっと秘密めいたものになりやすかったのではないでしょうか?

それに当時の貴族男性には、複数の女性と婚姻関係を持つことが今よりずっと社会的に認められていて、女性の将来も、家柄や結婚相手との関係に大きく左右されていました。

全ての女性がそうだったかは分からないけど、現代と比べれば女性が自分の人生を選べる範囲には、大きな違いがあったと思います。

恋人の心が離れていくことも、ほかの女性のもとへ通うことも、現代女性の「そんなやつこっちから願い下げ!」とはいかなかったのかも。

そう考えると六条御息所の執着も、ただの恋愛感情だけでもないように思われます。

1000年前の日本人の繊細な美意識


引用:https://www.metmuseum.org/『山本春正画 『絵入源氏物語』

工芸品の美しさにも何度も足を止めました。

細かい装束の意匠、美しい色使い、屏風や絵巻、能や雅楽にまつわる品々。

そして、徳川家の婚礼道具にまで受け継がれた『源氏物語』の世界。

一つの物語が、ずっと人々の憧れや教養、美意識の一部になっていたことにも驚き。

今なら機械で作りそうな精密装飾は、昔の人々の手仕事で生み出されていたこと。

どうやって作ったの?と近づいて見たくなるものばかりでした。

人の心を細やかに描く感性と、ものづくりに宿る繊細な美意識には、どこか通じるものがあるかも。

この感性が受け継がれてきたのだとしたら、とても興味深いと思います。

美しさには、人間の繊細な心がある


後半の工芸品展示の中には、現代作品で撮影OKもありました

今回の展覧会は、1000年前野日本の美意識に触れたいと思っていきました。

そして実際、素晴らしい美術品や工芸品をたくさん観ることができました。

でも帰路で歩いてるとき、私の心に強く残っていたのは、紫式部が描いたとされる六条御息所という、一人の女性の孤独や悲しみでした。

1000年も前に生まれたフィクションが、今の私たちにも理解できる感情を描いている。

人を愛すること。

自分の誇りを守りたいと思うこと。

思いどおりにならない感情に苦しむこと。

人間の心の根幹は、今と何も変わらない部分があり、それをしっかり描いた源氏物語。

1000年前から人々を惹きつけ続けてきた理由も、分かる気がしました。

1000年の美意識を観に行ったら、1000年前から変わらない愛と執着、葛藤に出会いました。

源氏物語については、もっと知ってみたくなりました。

歴史を知ることは、昔の出来事を覚えるだけではなく、今の私たちの生き方を考えることにもつながるかもしれません。

日本には、こんなにも長い時間をかけて受け継がれてきた文化がある。

もし興味を持った方がいたら、ぜひ一度、『源氏物語』の世界に触れに行ってみてください。

きっと、ただ美しいものを観る楽しさだけではない発見がありますよ!

参考 特別展 源氏物語 王朝のかがやき京都国立博物館